歯周病

歯周病は日本人の40歳以上の約8割がこの病気に罹っています。歯ぐき(歯肉)の内側は普段見ることは出来ませんが、歯の根の表面にあるセメント質と歯槽骨との間に歯根膜という線維が繋がっていて、歯が骨から抜け落ちないようにしっかりと支えていますが次第に壊されていく病気であり、最後には歯が抜け落ちてしまいます。歯周病予防は歯医者での定期的管理による歯石除去と、ご自身によるブラッシングが決め手となります。そして下記に示す原因に対する対応を忘れてはなりません。

歯周病の原因

ヒトの体には、外部から体内に侵入を試みる細菌やウイルスをシャットアウトする感染防御機構が備わっていますが、細菌に対する体の抵抗力が弱くなっていたり、口の中が細菌の活動を手助けするような状態になっていたり、歯周組織が破壊されやすい状態にあると、わずかな細菌の攻撃を防ぎ切れず、歯周病が発病・進行してしまいます。その歯周病を引き起こすのは主に4つの因子が考えられます。

 

歯周病原因因子

微生物因子

微生物因子とは、プラークの中の歯周病の原因となる微生物(歯周病菌)のことであり、口腔内には約700種の細菌が存在し、プラーク(歯垢)1mgには1億個以上の細菌が住みついているようです。それらが、むし歯や歯周病をひき起こします。
その中で歯周病をひき起こす代表的な細菌として次の3菌種があります。

Porphylomonas gingivalis:成人性歯周炎の代表的な原因菌
Tannerella forsythensis:歯周ポケットの深いところで検出
Treponema denticola:人の免疫機能を強く抑制する

その他10種類以上がわかっており、 虫歯や歯周病の原因となる細菌のかたまりであるプラークが増えていくと炎症がひどくなり、歯周ポケットも深く大きくなっていきます。それに伴って、どんどん歯周病の進行が促進されてしまいます。特に上記の3菌種はRed complexと言われている細菌群で、重症歯周病患者の約90%にこの細菌が検出されます。 

歯周病原細菌は夫婦間での水平感染が示唆されており、何らかの形で口腔細菌は家族への感染が認められるために夫婦間・親子間での感染のみならず、成人してからの感染もあるわけです。つまり、愛する家族の口腔を守るためにも、家族ひとりひとりの口腔ケアを徹底しなければなりません。

宿主因子

宿主因子とは、年齢、人種、歯数、糖尿病、歯肉滲出液中の物質、白血球機能、遺伝などがあります。

具体的には、加齢、糖尿病、骨粗鬆症、腎臓の病気、肥満などの生活習慣病や遺伝的なことが考えられます。

特に最近では生活習慣病の中でも糖尿病との相関性が高いことが知られるようになりました。糖尿病の血糖コントロール、HbA1Cのに関しては徹底した歯周病治療により改善されることがわかっています。その詳細は『歯周病と生活習慣病との相関性』にまとめていますのでご一読ください。

環境因子

環境因子として日頃の生活習慣として歯みがき習慣や口呼吸、喫煙、ストレス、飲酒、薬物などによる影響が関わり、歯周病が発病します。

歯みがき習慣
歯磨き方法やすべきタイミングについて改善しましょう。歯磨きが適切に行われない場合、歯周病を起こす細菌の温床であるプラーク( 歯垢)が歯のまわりに付着する事により、歯茎が炎症を起こして歯周病になります。

喫煙
喫煙すると口中の乾きに気づかされます。お口の乾燥は、口腔内常在菌のうち悪さをする菌(微生物因子で説明)が増えて歯周病になるようです。喫煙者は通常の健常者と比べ歯周病発症のリスクは5倍高まるといわれています。
タバコに関していえることは、
1.命は10年縮まる
2.歯の寿命も10年縮まる
3.心筋梗塞へのリスクは3倍高まる
4.肺がんへのリスクは7倍に高まる
5.喉頭がんへのリスクは33倍に高まる
6.夫の喫煙者による妻の肺がんリスクは2倍に高まる
7.子供への影響はかなり予測される
近年では電子タバコや無煙タバコが開発されつつありますが、出来るだけ禁煙すべく努力をしなければなりません。

以上のように癌・循環器疾患(心臓病・脳卒中)・呼吸器疾患(肺気腫・喘息)などの多くの病気の原因になりますので、喫煙は危険因子です。タバコのニコチンにより血液の流れが悪くなれば酸素や栄養が届かなくなり、気づいたときには歯周病がかなり進んでしまっている可能性があります。

ストレス
過度なストレスが続くと体内のバランスを崩して病気になると言われています。なぜならストレスを受けると体の免疫力が落ちるからであり、病気になりやすいのは体の中で一番弱っている部分です。もし、歯(歯周組織)が弱っていれば歯周病にかかってしまう可能性があります。

薬物の副作用
多科から何種類の投薬を受けている場合、薬からくる歯肉の腫れを生じます。そのまま放置すると悪化しますので、常にお薬手帳もしくは処方箋薬局からいただくお薬の内容を把握しておき、投薬の内容や種類の変更があった以降で、極端な歯ぐきの腫れを生じる場合はかかりつけ医との相談の上、お薬の変更を考えねななりません。

その他として、重要なのは口呼吸・いびきです。

口呼吸・いびき
私たち人間が呼吸をするのは、鼻か口のどちらかを使いますが、鼻から吸う鼻呼吸が自然な形です。なぜなら、鼻には吸った空気を浄化する機能が備わっているからです。口はもともと呼吸をするためにあるわけではないのですが、口でも呼吸ができます。口呼吸をしてしまうと、乾燥した冷たい空気が口から直接体内に取り込まれることで、口腔内や喉が乾燥し、細菌などや直接侵入、粘膜に炎症が起きてしまいます。口呼吸により体内に細菌が侵入すると免疫力が低下し、唾液の分泌力が低下します。しいては口臭、歯周病、虫歯の原因ともなるのです。 また、寝ている時には口が開き、いびきがおきてしまいます。いわゆる睡眠時無呼吸症候群ないしそれに似た症状を呈します。とくに最近は、子供たちから大人まで、さまざまな原因で口呼吸が増えて問題となっており、 場合によっては口臭も生じます。

咬合因子

咬合因子とは悪いかみ合わせ(外傷性咬合)、例えば歯ぎしり、くいしばりなどがあります。

悪いかみ合わせ(外傷性咬合)
歯並びが悪いと歯石がつきやすいです。歯の欠損・歯ならび・噛み合わせの異常などのさまざまな要因から、左右どちらかの奥歯だけとか前歯だけで偏った噛み方をしている人があります。偏った噛み方をしていると、一部の歯だけに力が加わって歯茎が傷み、歯周病になりやすくなります。

歯ぎしり・くいしばり
寝ているときに無意識で歯を痛める結果、歯周病に繋がります。歯ぎしりは自分では意識の無い、寝ている時に行なわれるため、食べるときなどでは使わないほどの強い力で、咬んだまま歯をギリギリと擦り合わせます。故に寝ている間に歯に思わぬダメ-ジが生じます。そして、最悪の場合は、歯と歯肉の間に汚れが溜まったまま歯ぎしりを繰り返すことにより歯周病が進行するのです。

この様に歯周病は、いろんな因子が重なり進行します。特に環境因子である生活習慣が乱れると歯周病は進行します。歯医者で定期的管理をうけてすみやかに治しましょう。

▷定期的管理の重要性